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フグレンのコーヒー、この5年間を振り返って

私の名前は小島賢治です。
Fuglenの日本の代表を務めています。

先週、5月10日にフグレントウキョウはオープンから5年を迎えることができました。
今回のNews Letterではこの5年間を振り返りたいと思います。
 

今から5年前の2012年5月10日、フグレントウキョウのオープンと共に、ノルディックライトローストのコーヒーを日本、そしてアジアに広めていくチャレンジが始まりました。

私のバリスタとしてのキャリアはオーストラリアのシドニーのスタイルとして始まりました。
厳密にそのようなスタイルの定義があるかはわかりませんが、私が学んだことを簡単に説明します。
中深煎りの酸味の少ないコーヒー豆をエスプレッソとしては少し粗めに挽き、トリプルバスケットと呼ばれるフィルターバスケットに22グラム前後の豆をガンガン押し込み、強い力でタンピングし、蜂蜜のようにゆっくりと落ちる液体をシングルで15mlくらい抽出した、いわゆるリストレットです。
とても甘く、少しビターでダークチェリーチョコレートの様な味わいでした。
そしてフィルターで抽出したコーヒーにはあまりこだわらず、ミルクベースのエスプレッソドリンクが主流です。
 

その後、ノルウェーのオスロで体験した衝撃のエスプレッソやエアロプレス、ポットからでてくる作り置きのコーヒーまでもが、それまでの私のコーヒーへの概念を180度変えました。

FUGLEN TOKYO オープニングの夜

FUGLEN TOKYO オープニングの夜

日本人にとって昆布やカツオ節、椎茸などでとった出汁はとても馴染みがあり大切です。
いい出汁は見た目はあまり味がなさそうですが、飲んでみると強く深いコクのある味がします。

オスロで飲んだコーヒーはまさにそれに近く、果実を煮込んだスープのようなものまでありました。
それらが全てコーヒー豆がもともと持っている成分を、焙煎により熱を加えるというシンプルな作業で引き出した個性だと知った時、この飲み物に人生を捧げてもいいと思いました。


オスロでのエスプレッソの抽出方法は私が学んだシドニースタイルとは逆で、中煎りよりも少し浅いローストのコーヒーを結構細かく挽き、18〜19グラムバスケットに詰め、体重を載せない程度にタンピングし、フルショット、見た目はどばーっという感じで長く抽出します。
はじめはあまりにも違いすぎて、理解することができませんでした。

そういう経験を経て、使用する生豆の品質や抽出に使う水の性質によって、コーヒーの作り方を変えていく必要があると理解することができました。

そして美味しいコーヒーを作るために一番大切なことは、素材である生豆の品質だと確信しました。

FUGLEN OSLO 朝の風景

FUGLEN OSLO 朝の風景

オスロのフグレンは自社で焙煎をしていません。

Tim Wendelboe、KAFFA, Supreme Roast Works (SRW), S&Hなど基本的に異なるオスロにある4社のコーヒーを仕入れています。
今ではいろいろなカフェで異なるロースターのコーヒーが飲めますが、10年も前からこのスタイルだったのはオスロのフグレンくらいだったと思います。

オスロのフグレンで働いていた時、私は毎日違うロースターのコーヒーを飲み比べ、それぞれのロースターの選ぶ豆、焙煎のアプローチの違いを楽しみながら勉強していました。


ある日の朝、バリスタをしているとコーヒーの配達にTim Wendelboe本人が来ました。
とりあえず、Tim本人が配達していることに驚きました。
そして、Timは私にエスプレッソを注文しました。

その日、提供していたエスプレッソはSRWの豆でした。
私はその頃ノルウェー語はもちろん、英語も全く話せませんでしたが、なんとか片言で「今日はあなたのコーヒーではないですよ」と伝えると、「もちろん、いいですよ!」ということになり、人生で初めてTimにコーヒーを作りました。

彼は「美味しいよ!」と言ってくれてお金を払おうとしたので、「お金はいらないです」と伝えると「いや、いいコーヒーだったし、払いたいから」と言ってお金を渡し次の配達に行きました。

短い時間でしたがちょうど良い緊張感に研ぎ澄まされ、自分が成長した感覚を覚えました。

その時から私は、まずはこの人を目指していこうと密かに心に決めました。

Tim Wendelboe(中央)とNordic ApproachのJoakim(左

Tim Wendelboe(中央)とNordic ApproachのJoakim(左

フグレンの東京店では2014年の自社ロースター設立まで、オスロのフグレンと同じようにオスロのロースターのコーヒーを空輸していました。

私たちが提供していたコーヒーはそれまで日本で飲めるどのコーヒーよりもライトローストで酸味が強く、ほとんどのお客様は初めて飲む味だったに違いありません。

私も日本人なのでこの味が浸透するには時間がかかると予想していました。

それでも、自分の信じたコーヒーの味を提供し続けることをやめてはいけないと思っていたし、ノルウェーのオスロのカフェそのままを体験していただきたかったので、システムや接客を含めできるだけノルウェー式を再現してきました。

それから2年が過ぎた2014年、念願の自社のロースターを都内に作ることができました。
ここからフグレンのプロファイルを持った、独自のブランドのコーヒーを発信していくことによって、お客様とさらに深いコーヒーの魅力を共有していく方向へと向かい始めました。

2016年12月に訪れたケニアのKaMWANGI Factory

2016年12月に訪れたケニアのKaMWANGI Factory

都内にも様々な新しいロースターが増え始め、それぞれの個性を持った焙煎の仕方をしています。
それらに共通して言えるのは、昔の焙煎よりも確実に浅い焼き方になっているということです。
コーヒー豆は焙煎が深くなるにつれ果実味が少なくなり、同時に個性も消えていきます。
また、浅すぎると植物感が残り、甘さも構築されず美味しくありません。
質の高い生豆を手に入れられるルートが確立され始めた今、どのように個性を表現するのかが焙煎のポイントになってきています。
それはもう浅煎りや深煎りという言葉では表すことはできません。
生豆選びが焙煎度合を決めていくと言っても過言ではありません。
 

気候の変動に大きく左右される農作物であるコーヒーは毎年同じ味になることはありません。
去年美味しかった産地が今年はそうでもないということが頻繁に起こります。
そのような厳しい条件の中で、良い生豆を手に入れるためには産地を訪れ、たくさんのコーヒーを飲み、できるだけ多い情報を収集する必要があります。

 

2012年にフグレントウキョウをオープンした時はまさか5年後に自分たちが訪れた農園から購入したコーヒーを、皆様に提供できるとは夢にも思っていませんでした。

自分たちが良いと思うものをこだわって作り続けて、それをたくさんの方に共感してもらえた結果、ここまで来ることができました。


これからも美味しいコーヒーを作ることに尽力していきますので、宜しくお願い致します。